【消費税の仕入税額控除】税込3万円未満は請求書等の保存は不要(インボイス制度で変更あり!)

令和5年10月からインボイス制度(仕入税額控除の適用を受けるためにはインボイス(適格請求書)が必要)がスタートするということで、最近は消費税について色々研究しています。

現行のルールでは、税込3万円未満であれば請求書等の保存が不要となっていますが、この特例もインボイス制度がスタートしてからは原則廃止となります。本記事では、改めてこの3万円特例の内容と今後インボイス制度下ではどのように制度が変わるのかについて、解説します!

なお、本記事でお話する請求書等の保存義務については、消費税の課税事業者として本則課税を適用する場合に要求されるルールなので、そもそも免税事業者であったり、簡易課税を適用する場合には関係ない話となります!

目次

現行ルール「税込3万円未満は請求書等の保存は不要」の内容

まずは、現行ルールの内容をおさらいしておきます。

原則として、消費税の仕入税額控除の適用を受けるためには、法定事項(相手先・取引日・取引内容・取引金額)が記載された帳簿と請求書等の保存が必要となります。

ただし、実務的な負担を考慮して、税込3万円未満(1商品ごとではなく1取引ごとに判定)であれば、請求書等の保存は不要で、法定事項が記載された帳簿の保存のみでOKという特例が設けられています。

上記を簡単に図示すると、下記の通りです。

税込3万円以上(原則)税込3万円未満(特例)
帳簿の保存必要必要
請求書等の保存必要不要
3万円特例のまとめ

なお、税込3万円以上であっても、請求書等の交付を受けなかったことにつきやむを得ない理由がある場合には、請求書等の保存がなくても仕入税額控除ができますが、この場合、帳簿には法定事項に加えて、そのやむを得ない理由と相手方の住所または所在地の記載が必要となります。

上記の「請求書等の交付を受けなかったことにつきやむを得ない」とは、どんな場合をいうのかなどについては、消費税高基本通達11-6-3に詳しく載っているので、詳しくはこちらをご参照ください。

インボイス制度下で「3万円特例」がどうなるか

インボイス制度下における「3万円特例」の取扱い

3万円特例についての内容は前述の通りですが、令和5年10月からスタートするインボイス制度下においては、なんとこの3万円特例が原則廃止となります!実務への負担増加を配慮した制度趣旨はどこにいったんだと言いたくなりますが、廃止という方向で法律が変わってしまうので、残念ながら従うほかありません・・・。

さて、具体的にどのように制度が変わるのかという点についてですが、以下のように変わります。なお、原則廃止と書いた通り、実はちょっとだけ例外も設けられています。ポイントとなりそうな箇所は、太字・赤字・下線を引いています。

インボイス制度下における3万円特例について

原則廃止。ただし、以下に該当した場合には、一定事項(※)を記載した帳簿の保存のみで仕入税額控除の適用を受けることが出来る。

  1. 適格請求書の交付義務が免除される3万円未満の公共交通機関による旅客の運送
  2. 適格簡易請求書の記載事項(取引年月日を除きます。)が記載されている入場券等が使用の際に回収される取引
  3. 古物営業を営む者の適格請求書発行事業者でない者からの古物の購入
  4. 質屋を営む者の適格請求書発行事業者でない者からの質物の取得
  5. 宅地建物取引業を営む者の適格請求書発行事業者でない者からの建物の購入
  6. 適格請求書発行事業者でない者からの再生資源又は再生部品の購入
  7. 適格請求書の交付義務が免除される3万円未満の自動販売機及び自動サービス機からの商品の購入等
  8. 適格請求書の交付義務が免除される郵便切手類のみを対価とする郵便・貨物サービス(郵便ポストにより差し出されたものに限ります。)
  9. 従業員等に支給する通常必要と認められる出張旅費等(出張旅費、宿泊費、日当及び通勤手当)

(※)一定事項とは、従来の法定事項(相手先・取引日・取引内容・取引金額)に加えて、上記のいずれかに該当する旨と相手方の住所又は所在地(一定の者を除く)の2つを加筆したものとなります。詳しくは、こちらの問88をご参照ください。

もう読むのも嫌になりそうな規程ですね・・・。多くの方に影響がありそうな部分にフォーカスして、ポイントをお伝えすると、以下の通りとなります。

  • これからは3万円未満でも請求書等の保存をしていないと仕入税額控除の適用は受けれない。
  • ただし、3万円未満の公共交通機関や自販機、又郵便切手や出張旅費については、例外に該当する旨だけ帳簿に記載していれば、請求書等の保存は不要。

という感じです。以上、インボイス制度下における3万円特例の内容についてでした。

この3万円特例については、国税庁が公表しているQ&Aでもいくつか問答がありますので、他にも事例などを調べたい場合には、こちらのページをご参照ください。「3万円」で文字検索すればヒットするかと思います。

実務上の問題点や課題

さて、ここまで3万円特例について、現行ルールと、令和5年10月からのインボイス制度下におけるルールの内容を見てきましたが、いかがでしたでしょうか。

ここからは私個人的な見解ですが、この3万円特例は、経理業務の負担を軽減するためにとても有効に機能していたルールだったと思います。3万円未満は一般的に考えれば少額な取引であって、3万円以上の取引による税額への影響に比べれば、とても小さいと思われます。しかし、取引の数でいえば3万円未満の取引数はおそらく多くて、それらの請求書等を漏れなく保存するためにはとても大きな業務負担となりそうです。

ある程度の規模の会社で、経理をする方がいればまだ対応出来るかもしれませんが、お一人でビジネスを回している個人事業主や一人社長にとっては、かなりの業務負担になるかと思います。もちろん、所得税や法人税のために請求書等の保存が必要となるので、何かしらの保存は必要ですが、今後は、例えば3万円未満の経費で、所得税や法人税では、クレジットカードの利用明細が認められているのに、消費税では「取引内容」の記載がないからダメといったことが起き得るということで、なんとも悩ましい問題です。

とはいえ、ここまで細かい内容が今後実務でどこまで厳格に要求されることになるか、つまりは税務調査でどこまでだったら見逃してもらえるのか、多少は配慮してもらえるのか、、、。今後この3万円特例の実務がどうなるか、今後の動向が気になります。

まとめ

以上、「税込3万円未満は請求書等の保存は不要(インボイス制度で変更あり!)」についてでした。

個人的にはこの3万円特例については、まだもう少し動きがありそうな気はしていますので、今後の動向を注視したいと思います!実務負担増加へのさらなる配慮があることを願うばかりです^^

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