油断すると痛い目を見る消費税の対応【消費税の怖い所・その対策】

税務実務を行う上で、個人的にどの分野が怖いかと言われると、私の場合は「消費税」です。

法人税や所得税の売上や経費などの処理については、部分的に難しい所もありますが、基本的には権利確定主義や債務確定主義に基づいて、その内容に応じて適切に処理すればよいので、そこまで怖くはありません。

それに対して、消費税は課税事業者の判定や免税と課税の選択、最近では間もなくインボイス制度という実務に多大な影響をもたらす新制度が始まるなど、その対応をミスると納税者に多大な損害を与えてしまう恐れがあります。今日は、そんな消費税について、私が怖いなーと思っていることや、その対策について書きたいと思います。

目次

消費税の怖い所とその対策

個人的に思う消費税の怖い所

冒頭にも書きましたが、消費税について、私は以下のような点が怖いなと思っています。

課税事業者の判定は、例外や特例のオンパレード!

基本的に消費税の課税事業者の判定は、前々年(前々期)の税抜きの課税売上高が1,000万円超かどうかで判定します。(1,000万円超であれば課税事業者)ですが、これには多くの例外や特例があって、例えばメジャーなものでは、下記のような例外があります。

  • 法人の場合は前々期が1年未満の場合、1年分に換算して判定する。
  • 特定期間(個人:前年1月~6月、法人:前期の最初6か月間)の課税売上高が1,000万円超の場合は課税事業者となる。(給与支払額による判定でもOK)
  • 新設法人で資本金が1,000万円以上の場合は、最初から課税事業者

例外規定でこれだけメジャーなものがあり、もはや例外という感じもしませんが、いずれにしても課税事業者の判定をする際には、上記のような判定基準を漏れなく、確認する必要があります。事業者によって、決算期や売上高・給与・資本金の内容はバラバラなので、それらを正確に把握しておかないと、判定を間違えてしまうので怖い所です。

課税事業者になるかどうかの選択と二年縛り(課税事業者を選択しない届出にも要注意)

消費税では、自分から消費税の課税事業者になることも出来ます。基本的に売上側の消費税が大きければ、免税事業者の方が有利なので、あえて自分から課税事業者になるメリットはありませんが、例えば多額の設備投資をしてスポット的に払い側の消費税が多くなりそうな場合には、事前に「課税事業者選択届出書」を提出しておくことで、あえて課税事業者となり、消費税の還付を受けるという選択もあります。

しかし、上記届出書を提出して、課税事業者となった場合には、最低でも2事業年度は免税事業者に戻ることは出来ないので、トータル2年間で課税事業者になることが得なのか、損なのかというのを事前にシミュレーションしておく必要があります。

また、上記届出書を提出して、課税事業者となった場合には、免税事業者に戻るときには2事業年度経過したら自動的に免税事業者に戻る訳ではなく、事前に「消費税課税事業者選択不適用届出書」を提出しなければならないという点にも注意が必要です。

こんな感じで、課税事業者になるかどうかの判断が事前に求められるという難しさや、届出の提出タイミングが事前にくるので、提出スケジュールをしっかりと把握しておかないといけないという怖さがあります。

インボイス制度などの税制改正への対応

消費税においては、令和伊5年10月1日から消費税の仕入れ税額控除の方式として「インボイス制度」が始まります。これは簡単に言うと、今まで免税事業者からの仕入でも仕入税額控除を受けられた課税事業者が、インボイス制度が始まってからは、免税事業者からの仕入れでは仕入税額控除を受けられなくなる(経過措置あり)という制度のことです。

これまで免税事業者として、いわゆる益税(消費税を納めなくていいので免税事業者は消費税分が実質利益になっていた)となっていた部分にメスが入るということで、それは致し方ないのかなという気もするので、その部分はまーいいのですが、個人的にはインボイス制度により、各事業者の経理業務への影響を懸念しています。

例えば下記です↓

  • クレジットカードの利用明細などで消費税法の請求書等としていた場合に、今後はそれらにインボイス登録番号が載るのかどうか・・・
  • 3万円未満は請求書等の保存が不要だった例外規定がどうなるか・・・
  • 請求書等をちゃんと発行していなかった事業者が今後は適宜発行が求められる・・・
  • 仕入税額控除を受けるための帳簿記載要件が今後実務上厳しくなるなどの影響があるか・・・

現状の消費税の仕入税額控除を受けるための帳簿記載要件を満たすだけでもかなりの業務負担なのに、さらに経理業務への負担が大きくなるということで、小規模事業者にとってはかなりの負担増加になってしまうのでないかと懸念しています。

とはいえ、インボイス制度がスタートしてからは、仕入税額控除を受けるためには、消費税法に従うしかないので、これらの規程にも従う必要があります。めんどくさいからといって、無視していると、仕入税額控除を受けられなくなり、かなりの痛手となるでしょう。

消費税対応を誤らないための対策(専門家目線)

消費税には前述のような難しさ・めんどくささがありますが、その対応を間違えたり・疎かにすると、納めるべき消費税額が過少になるなどして、後々多大な損害が発生する可能性があるので、しっかりと対応する必要があります。

上記の対応策としては、例えば下記があるかなと思います。どちらかというと、税理士側の視点です。

消費税への対応策
  1. 例外規定も含めて網羅的に勉強する。
  2. 税務イベントは予めスケジューリングする。
  3. 税制改正関連の情報はしっかりと把握する。
  4. 税理士職業賠償責任保険(税倍保険)に加入する。

<①網羅的な勉強>

消費税には例外や特例も多いので、一番有利な選択が出来るように、例外規定も含めて網羅的に勉強しておく必要があります。本記事のサムネにしている「消費税法基本通達逐条解説」には、制度の趣旨や背景にまで言及されているので、専門家が学ぶ際にはオススメです。

<②税務イベントのスケジューリング>

クライアント数が多くなってくると、頭で覚えているだけだと怖いので、Excelなどでクライアントの基本情報(課税免税・決算期・届出書の状況など)や税務イベント・期限などを一覧にしておくと、重要イベントの対応忘れといった基本的なミスを防ぐのに役立ちします。これは、私が前職でいた税理士法人でされていたことで、私もそろそろ取り入れようかなと思います。

<③税制改正のキャッチアップ>

毎年税制改正で税務実務やクライアントにどのような影響があるかはしっかりと把握しておく必要があります。国税庁からも分かりやすい資料などが適宜出されているので、そういったものも参考にしながら、キャッチアップしていくと効率的にキャッチアップできるかなと思います。

<④税倍保険への加入>

税倍保険に入っていない税理士はいないかもしれせんが、もしまだ入っていないのであれば、加入することをオススメします。税理士も人間なので、どんなに事前に対策をしても、ミスは起きてしまいます。税倍保険に加入していれば、ミスが起きた時に、クライアントに与えてしまった損害を保険でカバーできる場合もあるので、最後の対策として保険に入っておくことは有益かなと思います。

まとめ

この記事を書きながらも、消費税は本当に怖いなとつくづく思いました・・・。

サムネに載せている写真の2冊は、私のお客様で消費税対応が必要な部分があり、またこれからインボイス制度も始まるということで、購入した書籍になります。条文やポイントを理解するだけであれば、ネットで検索したり、国税庁HPを見ればだいたい分かりますが、やはり制度趣旨や背景、判例などもキャッチアップしておく必要がありそうだなと思い、購入しました。

時間を見つけて、消費税への理解を深めていこうと思います^^

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