会社廃業手続きの流れと注意点(主に通常清算の場合)

業績不振、後継者不在、定年などにより会社を廃業することがあります。個人の場合は廃業届を出して最後の確定申告をすればほぼ廃業手続きは完了となりますが、法人の場合はそう簡単ではありません。本記事では会社を廃業する場合の手続きについてその全体像や基本的な流れ、そして通常清算による場合の手続きの流れや注意点などについて現役税理士が解説します。

目次

会社廃業手続きの全体像

会社の清算方法としては、主に通常清算特別清算の2つがあります。通常清算とは債務を完済した場合に取れる方法のことで、特別清算とは債務超過の場合に裁判所の監督のもとに行われる清算方法のことをいいます。通常清算ではすでに債務を完済していますので比較的シンプルな手続きとなりますが、特別清算の場合は裁判所の監督のもと債務整理の手続きが行われることから裁判所への申し立て等、厳格な手続きが求められるという違いがあります。

通常清算は税理士や司法書士のみで対応できますが、特別清算となると裁判所や債権者との交渉も絡んでくるため一般的には弁護士のサポートが必要となります。本記事では実務上自分たちで対応が可能な通常清算にフォーカスして解説します。

通常清算では、会社の解散を決める→解散の登記・確定申告・届出を行う→債権の回収や弁済が完了→清算の登記・確定申告・届出を行う→会社の廃業手続きが完了となります。次章で詳しく解説します。

通常清算による場合の手続きの流れと注意点

通常清算の手続きの流れ

通常清算の手続きの流れは以下の通りです。

作業項目期限備考
①株主総会の解散決議、清算人の専任解散日を決定
②業務の終了、清算事務手続きの開始清算作業の開始
③解散・清算人の登記解散日から2週間以内司法書士が実施
④解散の確定申告と届出解散翌日から2か月以内税理士が実施
⑤債権者保護手続き(官報公告)、債権回収、債務弁済債権申出期間に最低2か月が必要
⑥清算手続き完了の株主総会決議清算完了日を決定
⑦残余財産の確定・分配みなし配当が発生する場合あり
⑧清算結了登記清算完了日から2週間以内司法書士が実施
⑨清算の確定申告と届出清算完了日から1か月以内税理士が実施
通常清算の続きの流れ

手続きに期限があるものは赤字、一般的に司法書士や税理士が行うものは青字で記載しています。

大きなタスクとしては、下記の3つがありまして、1つ目は清算人(会社関係者など)が中心となって行い、2つ目と3つ目は税理士や司法書士が中心となって作業を進めることになります。

  • 会社の各種契約や債権債務などの残務整理
  • 解散後の登記、確定申告と届出
  • 清算後の登記、確定申告と届出

⑤~⑦にかけて債務完済後に財産が残った場合には株主に分配することになりますが、資本金等の部分を上回る金額がある場合には、株主へのみなし配当となり、所得税が発生します。また税務署への源泉所得税の納付や支払調書の提出も必要になりますので税理士と連携しましょう。

通常清算に要する時間と費用、税金

通常清算に要する時間や費用、そして作業過程で発生する税金について解説します。

通常清算に要する時間は会社規模や残っている契約、資産負債の状況により変わってきますが、最低でも手続き完了までに半年程度は見ておくのがよいでしょう。例えば下記のようなスケジュール感です。

  • 税理士や司法書士への依頼開始から解散決定までに1か月
  • 債権者保護手続きのための官報公告に最低2か月(この間に解散の登記・確定申告・届出は済ませる)
  • 各種契約や債権の回収、債務の弁済などの残務整理に最低でも1か月~2か月
  • 清算完了後の登記、確定申告等で1か月

これはかなりスムーズにいった場合で、債権債務でややこしい内容のものがあったりすると半年から1年程度かかったりすることもあります。

次に通常清算に要する費用ですが、税金は別としてかかってくる費用としては主に下記あります。合わせて最低でも40万円程度はかかるでしょう。

  • 解散・清算登記の登録免許税等の実費:約5万円
  • 債権者保護手続きのための官報掲載費用:約4万円
  • 税理士代:20万円~(内容によって変動)
  • 司法書士代:10万円~(内容によって変動)

そして最後に通常清算の過程で発生する税金についてですが、発生する税金としては①解散する法人が行う確定申告により発生する法人税等、②みなし配当が発生する場合の所得税・住民税の2つがあります。

①は通常の確定申告と同様に解散事業年度、清算事業年度ごとに計算した所得に応じて法人税等が発生します。②はみなし配当は個人の配当所得となり、所得税(累進課税)と住民税(所得割10%)が発生します。みなし配当でも確定申告をすることで配当控除(所得控除or税額控除)が使えますのでので、確定申告も忘れずにするとよいでしょう。

官報公告と残務整理の重要性

最後に通常清算の手続きを進めるうえでの注意点について。

まず債権者保護手続きの一環で行う解散の官報公告についてで、官報公告はしなくても清算手続き自体は出来ますが個人的には必ずしておいたほうがいいと思います。なぜなら官報公告をしておくことで、事前に把握している債権者以外はこの公告期間中に申し出がなければ清算手続きが除外できるから、逆に言えば公告をしておかないと後から債権者であるといわれて清算手続き作業がやり直しになってしまうリスクがあるからです。債務の弁済額によっては残余財産の分配額が変わったり、特別清算への切り替えが必要になったりと様々なリスクがあるため、解散の官報公告は是非しておくことをお勧めします。多少お金はかかりますが、個人的には必要経費だと思います。

次に残務整理について。残務整理とは賃貸や各種サービスの契約終了、資産の回収、債務の弁済などのことで、つまるところ会社で行ってきた業務の後片付けです。個人的には解散や清算の登記・確定申告・届出よりも、この後片付けの方がよっぽど大変だと思います。1つのサービス契約を終了するだけも相手方と何往復もやり取りが必要になります。こうした契約関係を一つずつ終わらせながら、それによって債権債務が生じる場合にはその都度対応が必要となります。こうした残務整理は面倒であるのですが、債権債務に影響があったり、後でトラブルとなるリスクもあるので、一つ一つ丁寧に完了させましょう。

まとめ(会社廃業は結構大変)

以上、主に通常清算の場合での会社廃業手続きの流れと注意点についてでした。会社を作るのは結構簡単ですが、廃業手続きはその何倍も大変だということは知っておいて損はないでしょう。私の体感的には会社の廃業手続きは設立の3倍~5倍は大変です。

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