会計データ、決算書のチェックポイント

私はこれまで一部上場企業での経理部や経営企画部、大手監査法人での会計監査、中堅税理士法人での税務業務の仕事をしてきました。日々の伝票起票から税効果会計などの難易度の高い領域まで経験し、決算書の作成や外部へのリリース、会計監査も多くこなしてきました。その中で、数字のチェックも当然行うわけですが、私が普段チェックする際に注意しているポイントについてご紹介します。

目次

前月比較、前期比較

会計データをチェックする際にまず行うのがこれです。経験上、これで間違いの半分ぐらいは見つかります。前月末との比較で当月に計上した仕訳の動きが分かり、前期比較(BSは前期末比、PLは前年同期比)で当期に計上した仕訳の動きが分かりますので、これらの動きに違和感がないか(異常値がないか)を確認します。

チェックを毎月行っている場合は、特にマイナス差額となっている場合は注意が必要です。仕訳の内容や科目、貸借が合っているかや、必要な仕訳が漏れていないかなど確認してみましょう。

マイナス残高

これも前月比較等に次いで大事なチェックになります。マイナス残高というのは基本的には望ましくありません。そもそもの仕訳の貸借が間違えている可能性もありますし、その他色々な原因が考えられますので、まずはマイナス残高にさせてしまっている仕訳を特定し、あるべき仕訳から考えてみましょう。

消費税区分

免税事業者であれば関係ないですが、課税事業者の場合は基本的に売上や経費について消費税区分というのを仕訳入力段階で合わせて入力します。この消費税区分は消費税の知識が必要になるため、難易度はぐっと上がります。私が税理士法人にいたときも、顧問先の消費税チェックは必ず行っていましたし、ほぼ毎月修正項目が出ていました。

ただでさえ判断が難しい消費税ですが、税務調査が入るとここは厳しくチェックされますので、課税事業者となる場合には税理士や会計士などの専門家にチェックをしてもらうことをお勧めします。

転記ミス、入力ミス

仕訳の入力ミスももちろんありますが、決算書や決算書を作るために別途基礎資料をExcel等で作っている場合なんかに注意すべきポイントです。決算書の数字は元をたどれば1本の仕訳です。その仕訳の積み上がりと仕訳データを加工した情報の合算が決算書になりますので、各段階での数字の転記ミスや入力ミスは誤りの原因となります。

とはいえ、すべての数字の転記ミス、入力ミスをチェックすることは現実的ではないので、まずは前月比較やマイナス残高等の異常値チェックを行い、そこで引っかかった項目を重点的にチェックするのが効率的かと思います。

科目の区分

会計監査なんかをしていると結構意識しているのが科目区分になります。科目区分というのは、資産負債であれば1年以内に決済されるかどうかの流動固定区分、損益であれば原価か販管費かの区分、営業外損益か特別損益かの区分などです。会計監査的にはこの科目区分を適切にしていないとNGということになります。

会計監査を受けていない会社や個人事業主であっても、科目区分をちゃんとしていると、経営状態の分析や経営判断に役立ちます。特に原価販管費の区分は、粗利(売上総利益)と営業利益の区分に繋がり、経営分析上も有用なデータになりますので、原価と販管費はある程度分けて計上することをおススメします。

科目の妥当性

個人事業主や小規模企業であれば科目名はざっくり合っていればいいと思います。銀行や投資家への開示が必要な企業であれば科目の妥当性も意識してみましょう。一般的な科目と異なっている場合、説明が必要となり面倒ですし、後から訂正するとなると結構大変です。

どんな科目名にすればよいかは、企業会計原則、会社法計算規則、財務諸表等規則等を参照したり、グーグル先生に聞いたりして一番妥当そうなやつを選ぶとよいと思います。そして一度選択した科目は基本的には毎期継続します。コロコロ変えると比較ができなくなってしまいますからね。

一度頭を冷やす

いくらチェックをしても人間なのでミスはあります。細かい数字をずっと眺めていると集中力も落ちてきます。そこで、ざっとチェックが完了したら少し時間をおいてから改めて会計データや決算書を眺めてみましょう。意外と「あれ?ここ間違えたままじゃん」と誤りが見つかったりします。

重要性

最後に重要性という話です。会計というと1円単位まで合わせる必要があると思ってしまう方もいると思いますが、そこまできっちりやるのは大変ですし、現実的ではありません。そこで、税額に与える影響や利害関係者の判断に与える影響が小さい場合は、それを許容するというのが重要性という概念です。会計監査的にも、会社ごとに重要性の金額を定めて、その金額未満の金額はミスがあっても基本的に問題としないということになっています。

正確な会計データを保持するためのチェック作業は、完璧を求めれば求めるほどそれにかかる時間も増えていきます。そのため、チェック作業の費用対効果を意識して、極端に時間をかけ過ぎないことも大切なことだと思います。

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